巡り愛



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「・・・・・あいはやっと僕の所へ帰って来てくれたんだ」


長い話を話し終えた僕は、目の前で難しい顔をして聞いていた矢野に、呟くように言った。


矢野はとても複雑な顔をしている。
それは当然の反応だろう。
こんなことを話して、信じろと言う方が難しいと思う。


でも生まれた時から僕の心の中に刻まれているこの記憶は、幻なんかじゃないと僕にはわかる。


あいを心から愛していた彼の生まれ変わりが僕なんだ。


そして、儚く逝った彼女の生まれ変わりがあい。


それは紛れもない真実だと、僕には信じられた。


「ごめん・・・何か、混乱してる」


ずっと黙っていた矢野が、小さな声で呟いた。
当然の反応に僕は笑顔を見せて、首を振った。


「謝る必要なんてないよ。信じられなくて当然だ。でも・・・僕にはそれが真実だと思うから。ずっと僕の心の中にいたあいが今、僕の前に存在してくれていることが何よりの答えだと思うから」


「・・・だったらなおさら、お前がしっかりしないとダメなんじゃないの?」


「え?」


思いがけない矢野の言葉に、僕は目を見開いて言葉に詰まった。
矢野は真剣な表情を浮かべて、強い視線で僕を見ていた。


「今のお前の話をどうこう言うことは俺にはできないよ。けど、お前がそうだと思うなら、それが真実なんだろう。だったら今、お前がそんなに迷っていてどうするんだよ」


「・・・・・・・・」


「桐生は彼女のために医者になったんだろ?心臓外科だもんな・・・いつか出逢う彼女がもし心臓を患っていたらって、そういうことだろ?だったら今がその時だろ?お前がちゃんと向き合って、守ってやる時じゃねぇの?」