いつの間にか寝ていた僕は、ハッとして意識を取り戻した。
そして、慌てて立ち上がると、寝ているあいの顔を覗き込んだ。
ずっと苦しんでいたのが嘘のように、あいは穏やかな顔をしていた。
呼吸も乱れていないし、苦しそうに顔を歪めてもいない。
一瞬、安堵の溜息を吐きそうになった僕は、急に不安に襲われて、あいの白い頬に手を伸ばした。
熱であんなに熱かったあいの頬は・・・氷のように冷たくなっていた。
それからのことはあまり覚えていない。
冷たくなったあいをただ掻き抱いて、僕は溢れてくる涙を止めることができなかった。
動かなくなったあいを抱き締めても、もう優しく抱き締め返してくれることはなくて。
その名前を何度呼んでも、微笑み返してくれることはなくて。
『圭さん』とその愛しい声で僕の名前を呼んでくれることも・・・もう叶わない。
僕はただひたすら、あいを想って冷たいあいを抱き締めていた。
あっけなく逝ってしまったあいを忘れることなんてできない僕は、それからずっと彼女だけを想っていた。
最後に夢の中であいが言った言葉を心に秘めて。
僕は僕の人生を全うした。
『いつか必ず、あなたのもとに帰るから・・・・・』

