「桐生・・・お前、大丈夫か?ものすごく顔色が悪いぞ」


矢野が怪訝そうに歪む僕の顔を見ている。
確かに頭痛がする。
精神的なものだとわかるけど、この状況では当然だと思う。


一番、恐れていた結果に平然としていられるほど、強くない。


情けないと思うけど、僕はかなり動揺していた。


「なあ、お前どうしてそこまで心配するんだ?心臓外科医のお前なら、これくらいの症状はいくらでも見てきただろ?どうすればいいかも知ってるはずだ。なのにこの世の終わりみたいな顔して・・・」


「僕と出逢ったせいでこの症状が出てきているってことが問題なんだ。僕と一緒にいるともっと悪い方へ行きそうな気がして怖いんだよ」


矢野が僕の過度な反応に心配そうに訊ねる言葉に被せるように、僕はつい本音を漏らしてしまった。


「はぁ?・・・お前、何言って・・・」


しまったと思っても後の祭りで。
矢野の表情が更に怪訝さを増して、眉を顰めて僕を見ている。


とりあえず誤魔化そうと思って口を開きかけた僕を矢野は睨みつけるように見ていて。
僕の心のうちは読まれてるんだと気付いた。
矢野は誤魔化しは利かないとその強い視線で僕を威嚇している。


僕は観念するように深い溜息を吐いて、矢野には信じ難いだろうその話を小さな声で話し始めた。


聞いた後の矢野はきっと、信じないだろうなと思いながら。