「嫌だねぇ。お前、ホントいつからそんなに心配症になったの?」
クスクスと可笑しそうに笑いながら、矢野先生が軽い口調で言った。
「煩いよ・・・。あい、ここに座って」
ムッとしたような声で矢野先生に一言言った圭さんは、すぐに私に向き直って、口調を優しいものに変えると、先生の前に置かれた椅子に私を座らせた。
「ぶっ。何、その態度の違いは」
矢野先生が堪え切れないとばかりに噴出して、ケラケラと笑った。
「・・・・・矢野、それやめろ。あいが怖がってるから」
「え、そんなことは・・・」
圭さんは普段私には見せないような機嫌の悪い顔をして、矢野先生に文句を言うのを聞いて、私は思わず小さな声を出した。
そんな私に矢野先生は笑い声を止めて、優しい笑顔を向けてくれた。
「ごめんね、えっと・・・水瀬さん・・・あいちゃんでいいかな?普段そう呼んでるから、そっちの方が俺としてはしっくりくるんだけど?」
「え?・・・は・・ぃ」
「ダメ。気安く名前を呼ぶなって何度言ったらわかるんだよ」
気軽な矢野先生の言葉に戸惑いながらも了承の返事をする私を遮って、圭さんが更に機嫌の悪くなった声で答えた。
「はははっ、桐生って嫉妬深いよね、あいちゃん」
「矢野!」
機嫌の悪い圭さんを無視して、矢野先生はもう一度可笑しそうに笑うと、また私のことを『あいちゃん』と呼んだ。
それに圭さんは反論するように声を上げるけど、矢野先生には通じないみたいだ。
何だか二人のやり取りが少し子供っぽくて、私はクスッと小さく笑った。
無意識に緊張していた気持ちが、軽くなった気がした。

