圭さんと高原へドライブに行ってからも私達は穏やかに日々を過ごしていた。
でもあの日から・・・私が運動不足のせいで丘を登るのに息切れしてしまったあの後から、圭さんはなぜかとても私の体のことを心配してくれるようになった。
ただの運動不足のせいなのに、そんなに心配されると申し訳ない気持ちになる。


それにあの時から時々見せる不安そうな彼の瞳。


『どうしたの?』と私が訊いてもすぐに優しい笑顔で『なんでもないよ』と言うだけで。
何も話してくれないことが、私の心にも不安の影を落としていた。


圭さんの私の体調への心配とあの不安そうな瞳は何か関係があるの?


それは“あの頃”のことに関係しているようにも思えて。
でも私には何も思い出せない。


圭さんを不安にさせている“何か”を知るすべのない自分自身が歯がゆくて仕方なかった。


優しい圭さんと一緒にいると幸せで満たされるのに、その幸せを感じるほど、圭さんのために何もできない自分が情けなかった。