巡り愛



1週30分と言われていたけれど、そんなことをしていたから少しだけ時間オーバーをして元の場所に戻ってきた私達。


貸しボート屋さんのおじさんは、笑顔で出迎えてくれると、先に降りる私の手を持ってくれた。
圭さんもすぐにボートから降りて、さっきおじさんに持たれた方の手に素早く手を重ねる。
もちろん繋ぎ方はお互いの指先を絡めて。


「他意はなかったんだけどなぁ・・・お嬢さん、愛されてるね」


私達の繋いだ手を見ながら、可笑しそうに笑うおじさんに、私は顔を赤くした。


圭さんはまったく動じずに悪びれもせず「はい、愛してますから」なんて言うから、私はますます赤く染まって、恥ずかしくて顔を上げられない。


「ははは、いいねぇ、若いって」


おじさんはそう言って豪快に笑うと、ちょうど乗り場にやってきた新しいお客さんのところへ行ってしまった。


それでもまだ顔を上げられない私を圭さんは腰を折って、覗き込む。


「ごめん、嫌だった?」


心配そうな声に、なぜか可笑しくなって。
私は首を振りながら、顔を覗き込む圭さんと目を合わせた。


「嬉しかった」


そう答えた私に満足そうな笑顔を見せて、圭さんは指を絡ませたままの手を引いて歩き出した。


「そろそろお弁当の時間にしよう。あいのお弁当が楽しみで仕方なかったから、もう待てないよ」


子供みたいな顔をして笑う圭さんに私も自然と笑顔になって、二人で笑い合った。


「うわぁ、すごく豪華だね!美味しそうだ」


湖のそばにあるテーブル付きのベンチに座ってお弁当を広げると、圭さんが感嘆の声を上げてくれた。


圭さんが言うほど、豪華でも美味しそうでもないと思うけど、そう言ってくれる言葉が嘘には聞こえないから、私は嬉しくなって笑顔で圭さんにお箸と取り皿を手渡した。


「いただきます!」


ちゃんと両手を合わせてそう言った圭さんは、どれから食べようか少し迷って、卵焼きを一つ、お箸で摘まんだ。


私は圭さんがその卵焼きを口に運ぶのを、ドキドキしながら見つめていた。


甘い卵焼き、圭さんの口に合うかな?


大好きな人に自分の作ったものを食べてもらうのがこんなに緊張するなんて思わなかった。