「別に敬語が嫌だとか言うんじゃないんだけど・・・なんかちょっとだけ他人行儀かなって・・・・・ごめん、我儘かな」
圭さんが困ったように眉を下げて、オールから片方の手を離して首の後ろに手を当てた。
照れてるのかな?
そんな風にちょっとだけ冷静な振りをして圭さんを見ているけど、本当は、圭さんの言葉が嬉しくて堪らなかった。
他人行儀な敬語じゃなくて、もっと距離を縮めた話し方がいいって暗に言ってくれる圭さんのことが、堪らなく愛しく思えた。
「すぐには無理かもしれないけど・・・敬語は使わないようにしま・・・じゃなくて、する・・・・・私も圭さんともっと距離を縮めたいから」
言いながら照れてしまった私は俯いてしまう。
だから気付かなかったのだけど。
急にボートがガタンと揺れて驚いて顔をあげると、そこには圭さんの整い過ぎた顔が間近にあって・・・
驚いて息を呑んだ私の唇に柔らかな圭さんの唇が重なった。
それは数分だったのかもしれないし、数秒だったのかもしれない。
長いような、でもやっぱり短い時間。
触れるだけのキスよりもちょっとだけ深くて甘いキスをして、そっと離れていった圭さんの唇が嬉しそうに弧を描いた。
「嬉しいよ。あいも僕との距離をもっと縮めたいって思ってくれて。僕だけじゃないことが、ホントに嬉しい」
そう言って目元を染めて、でも真摯な顔をして笑う圭さんに私は真っ赤な顔をして答えた。
「私だって圭さんの一番近い女の子でいたいって、思ってるから」
突然のキスの余韻も冷めやらぬ間に、圭さんはもう一度、私の唇を奪うようなキスをした。
「嬉し過ぎるから・・・あい、反則だ」
チュッとリップ音を立てて離れた圭さんの顔は今まで見たことがないくらい、真っ赤に染まっていた。

