巡り愛



牧場にあるカフェで、休憩がてらのコーヒーを飲んだ後、私達は更に高原の上にある湖に向かった。


キラキラと輝く水面がとっても綺麗。
その水面をもっと近くで見たくて、私達はボートに乗った。


乗り込む時、ちょっと揺れて怖かったけれど、圭さんが手を引いてくれて抱きかかえるようにして乗せてくれる。


ひょいっという感じで軽々と抱きかかえてくれる圭さんに、いつもよりもずっと男の人らしさを感じた。


揺れるボートの上に、私が怖々とゆっくり座ると、圭さんがオールを漕いでボートを湖の沖へ進める。
そんなに大きな湖じゃないから、一周30分くらいだと貸しボート屋のおじさんが言っていた。
ゆっくりと進むボートが立てるさざ波を見ながら、私は少しだけ身を乗り出して、指先だけ水に浸けた。


「あんまり乗り出すと危ないよ。もし落ちても僕がすぐ助けてあげるけど」


私はそっと体を起こして、圭さんを見上げた。
優しく微笑んで私を見つめていた圭さんの眼差しが眩しくて。
私は目を細めて、彼を見つめ返した。


「ありがとうございます・・・でもそんなことになったら大変だから、大人しくしてます」


照れ隠しで言った私の言葉に圭さんは声を立てて可笑しそうに笑うと、ちょっとだけ考え込むような顔をして口を閉じた。


・・・なんだろう?


私が少しだけ不安になっていると、圭さんは徐に真顔になった。


「ねぇ、そろそろ敬語はやめにしない?」


「へ?」


唐突な提案に私は間抜けな声を出してしまった。
敬語をやめるっていうのは、私の話し方のことだろう。
確かに圭さんと付き合うようになって数か月経つのに、私は未だに敬語で。
でもなんだかその話し方が私にはとても自然で、変えようと思っていなかったのだけど・・・


圭さんは敬語、やめてほしかったんだ。


初めてそのことに気付いた。