魔法のキス


アパートに戻り、母に電話を入れた。


「もしもし朋花!あなたどこにいるの?ママも雄馬君も心配してるのよ!早く帰ってきなさい」


なんとなく説明しても通じないような気がした。


「坂口さんのアパートにいるわ。今日は泊めて頂くの。心配しないで。明日にはマンションに戻るから。雄馬には帰ってもらって。私はしばらく会わないつもりだから」


雄馬とは話し合わないといけないが、少し時間をおきたい。


「もう勝手なことばかり言って!お父さんに言ったらどうなると思ってるの?せっかく許してもらったんだから素直に喜んだらいいだけでしょ!」


「私の考えは全く聞いてもらえてないじゃないの!許すとか許さないとかなんなのよ?親の言うことだけを聞くだけの人間になれってこと?変よ。お母さんも私の考えを聞いてくれないなら帰って!」


「考えって?とにかく明日マンションに戻りなさい。お店は坂口さんにお願いして」


「雄馬がいるなら帰らないから」


「わかったわ。いつからそんな頑固になったの?明日2人で話しましょ。いいわね?」


「わかった。明日の朝には帰ります」


狭い部屋だから、坂口さんにも丸聞こえだ。


「ごめんなさいね。なんだか坂口さんを巻き込んでしまったみたいで」


「いいんですよ、嬉しいです。頼ってもらえて。話は聞きますよ。なんでも話して下さい」


そう言えば、こちらに来ても友達はいなかった。
相談の出来る人がいることはありがたいことだ。


私は今までのことを全部坂口さんに話した。
家のことも、何故KissMagiaに店長として来たのか、そして雄馬のことも……。