魔法のキス


今日はマンションには帰らないつもりで出て来たけれど、大急ぎで下着だけバッグの下に忍ばせてきただけなのだ。


ビジネスホテルにでも泊まればいいと思っていた。


坂口さんと歩いて銭湯へと向かう。
大きなスーパー銭湯のイメージとは違ったが、若い人にも気楽に入れる雰囲気になっているようだ。


ロッカーに洋服を入れて、坂口さんから借りたタオルで、身体を隠しながら中に入る。


服を脱いでいるときに見た、坂口さんの身体は女らしかった。


坂口さんは彼氏はいないのだろうか。



いけないいけない。
そんな目で坂口さんを見ては。


坂口さんについてお風呂場の方へ。
ジェットバスやサウナなど2〜3種類あるみたいだ。


軽く身体をシャワーで流して湯船に浸かる。


こんな大きなお風呂は久しぶりだ。
家族で温泉に出かけたのは、もうずいぶん前のことだから。


「店長さん、シャンプーとリンス市販のものだけどこれ使ってください。ボディーソープも」


この銭湯は昔ながらの銭湯を改装したものらしく、石鹸やシャンプーは自分で持ってこなくてはいけないのだ。


「ありがとう。なにからなにまで」


寒さで身体が芯まで冷えていた。
身体と髪の毛を洗い、また湯船に入る。


「店長、社長さんに連絡しておかないと心配しますよ。銭湯に来る前にすれば良かったですね」


あ、ケータイの電源を切っていたが、たぶん2人から着信があっただろう。
アパートに戻ったらしておこう。