魔法のキス


そうだ、今日はマンションに帰りたくないから、どこか泊まる場所を探さないと。


「来て早々悪いんだけど、この近くにホテルはないかしら?今日はうちに帰りたくないないから」


「えっ?ホテルですか。駅の方に行けばあると思いますが、もし良ければここに泊まってもらっても構いませんよ」


えっ?ここに?
だって坂口さんの部屋、一部屋しかないし……。


悪いけどほんとに古いアパートだ。
玄関入るといきなり6畳くらいの部屋があり、奥にあるドアからキッチンへと入れるようだが……。


「でも、それは悪いわ。いきなり来たんだもの」


「そうですよね。でもお話があって来たのではないのですか?暗くなってから外を歩くのは危険ですし、でもうちはお風呂がないんです。キッチンの奥にシャワールーム的なものはあるんですけど」


お風呂がない?
どうしてるんだろう。
冬もシャワーで済ませるのか?


「泊まって頂くなら、今から銭湯に行くことになるんです」


銭湯?
そんなところ、まだあるんだ。
行ったことはないが、スーパー銭湯はわりと人気はあるのは知っている。


「じゃあ、お言葉に甘えて泊めて頂くわ。ゆっくり話を聞いて欲しいし。じゃあ今から銭湯ね?あ、タオル持ってきてないんだけど」


「お貸ししますので」


「ありがとう」