魔法のキス


1階のエントランスに下りると母がいた。
待ちくたびれたと言いたげな顔で、腕を組んで待っている感じだ。
嫌な予感……。


「朋花、遅いわね〜なにしてたの?」


はぁ?


「いや、戸締りを確認してエレベーターで下りて来ただけだよ。でもエレベーターがさ〜」


私が言い終わらないうちに母がまた言葉を出す。


「もっとテキパキと動くようにしなきゃ駄目でしょ。あんたは動作が鈍いんだから。面接でもそんな態度だとバカにされるわよ」


また説教かい。
そんな私に、支店を任せる事が間違いだったんじゃないの?


動作が鈍いのは生まれつき。
私なりに努力はしてるつもりよ。


それに、家の戸締りはちゃんと確かめないと危険じゃないの。