ピンポーン
ぅわぁあっ
もう来ちゃったの!?
「はっ、はーい!」
準備をしていた私は、慌ててインターフォン越しに応対する。
『おはよ、ミサ。もう準備は出来てるかい?』
我が家のインターフォンは古いタイプで、画面はなく、声を聞いて准が来たことを確信した。
「ごっ、ごめん!もうちょっと待っててくれる?」
『ぁあ、いいよ。慌てずに出て来な?』
「うん。じゃ、ちょっとだけ待っててね。」
インターフォン越しの会話もそこそこに、私は準備の続きを始めていく。
『あら、早速デート?どうりでいつもよりオシャレしてると思ったわ。』
「っ、お母さん!からかわないでよ!」
准を待たせてるっていうのに、冷やかしが大好きな母が横から茶々を入れてくる。
『何っ!?美沙子っ、でっででデートというのは本当か!?まっ…ままままさか香坂部長の息子さんでは…っ⁉』
「うん、そうだよ!お父さん邪魔!時計が取れないでしょ!」
『お、おおおお俺の美沙子がぁああ…っ!』
『ちょっ、パパ!?』
いつも過保護な父が何故か倒れていたけれど、とっさに母が父の体を受け止めて介抱しているのをチラ見した私は、玄関へと急ぐ。
「いってきます!」
『いってらっしゃーい!何なら、今日は帰ってこなくてもいいのよ~』
『なっ、何を言ってるんだ、ママは!美沙子!ちゃ、ちゃんと帰ってくるんだぞ!』
家を出るとき、両親がごちゃごちゃ言っていたのをすべて聞き流した私。
まともに聞いてたらいつまで経っても家を出れないことは、もう長年の経験で心得ていることだ。
「准!」
『、ミサ。』
表札に背を持たれていた准が、私に気づいて微笑んだとき、幸せだと思った。

