『すごく、盛り上がってますね。』
「そうですね…いつもはこんなことないはずなんですけど…。」
『え?』
確かに、今日は私が社会人になって初めて出場する試合だけど…。
去年なんて、ガラガラだったんだけどな…。
うーん…と頭を悩ませている間に、観客席に着いた。
前列は満員御礼の状態だ。
「後ろしか空いてませんね…。」
『ぁあ、大丈夫。後ろでも構わないから。』
「すみません…。」
気にしないで、と言いながら、香坂さんは最後列に座った。
「じゃ、私、もう行きますね。」
『ぁあ、…頑張って。』
「っ──はい」
やられた。
不意に向けられた香坂さんの必殺スマイルに、ノックアウト寸前。
選手控え室に向かいながら、これは負けられないと思った私だった。

