音に乗れ!


音楽室につくと『あつーい。風!風!』と言い訳をしながら足早に窓へと向かった。

先生の指揮台に向かって半円に並んだみんなの椅子や、譜面台、楽器をきれいに避けながら窓にたどり着くとそっと一番端を解放する。

首にぶら下がったサックスを支えたまま、下を覗くと予定通り野球部が渡り通路の横でストレッチをしていた。

『沙代、野球部いるよ?』

えー!わきゃー!とい言うような声をあげて、素直な沙代は駆け付ける。


『全然気付かなかったね。』
と言ったあと、わざとらしかったかな?とドキドキしたけど沙代は気づいていないようだった。


『わぁ超ーかっこいいよ初沢くん。かっこいいよートランペット吹いちゃおうかな。』

それはやめなよと笑ったけど、私だって本当はサックスを吹いて振り向かせたかった。

自信のある曲を吹いて、教室とは違う一面を見せたかった。

ざわざわバッテリーはペアを組み、ストレッチをしてる。

テニス部の子達が横を通ったけど見向きもしない姿にホッとする。