プァー
プァー
プァー
ヒュルルルルルルルー
まだまだ蒸し暑い夏休みの教室に、管楽器の音が響く。
コチ コチ コチ コチ
と揺れるメトロノームを見つめながら、私たち脱力していた。
『やっぱへこんだよねー。涙だよー。時間戻したいよねー。』
時間を戻したがる沙代は、首にぶら下げたタオルで顔を覆った。
『沙代。泣いてるの?』
椅子にズルンと腰掛け、足を開いたまま座る沙代は少し勇ましい。
『泣かないよー。泣かないけどさぁあれは涙だよねー。』
うん。と言う私の返事を確認して、沙代は左手でタオルに覆われた顔の口だけを出し、右手に持ったトランペットを吹いた。


