音に乗れ!

階段を駆け下りると1年生が「さようならあ」と挨拶をした。
「さよなら!」と笑顔で手を振り沙代とお揃いのコンバースに履き替える。

下駄箱を出て校舎の裏に回る。職員室の前を駆け抜けて校庭の手前でスピードを落とした。
校庭は西日でオレンジ色に染まり、すごく優しい色をしていた。

「間に合わなかったあ。」
沙代の顔を見るとふくれっ面になっている。

「吹部の方が先なんて滅多にないのにな。」

「うん。」

オレンジ色の大きな夕陽を見ながら、わたしたちは校庭を抜けて裏門へ向かった。
野球部の部室の前を通過したけど、電気も消えて静まり返っている。
野球部の新部長聞きたいのにな。私は内緒で落胆していた。

「森岡!戸田!」

名前を呼ばれてぐるりとそちらを見ると、垣根の陰にクラスの野球部のコジカがいた。