音に乗れ!

杏ちゃんはみんなの前で、前任の酒井先輩のようにとかなんとか話をした。

窪田さんは生徒会と兼任だから迷惑かけたらとかなんとか
沙代が不束者ですがとか言ってみんなを笑わせて
私は固まって「がんばります」とだけ言った。

新しいことを決めるときって、どうしてこんなに胸がざわざわ言うんだろう。
入学式の時みたいに、ドキドキして顔が熱くなった。
会議には参加できるのかな?合宿には?

先生に聞きたいけど、全部全部恥ずかしくなって何も聞けなかった。

「やばいね?一緒に昇進だよ。」
下校の時に沙代はにししと笑った。楽器をきゅきゅきゅと磨いてケースにしまう。

「補佐だよ補佐。昇進してないから。」
にやにやしないように気をつけながら、私は沙代を見ないで返事をする。

「ね。まだ野球部いるかも!グランド通って帰ろ!」
ガタガタガタっと猛スピードで楽器をしまう沙代は、鞄をしょって髪を結び直した。

「早織、早く!」

いますように。野球部も同時に終わりますように。