ガタン ガタン

山道を駆け上がるバスに揺られて梛神は目を覚ます。

自宅から出て早16時間。
同じ県内にあって、そこまで広くないのにやたらかかる通学路。

学校はこの山の上にあるらしい。

梛神はカバンから学校のパンフを、取り出した。

ー私立星空学園ー
創立100年目で、かなりの頭のいい人が行く学校。
偏差値は80だとか…。
それの特別学科。
とんでもなく頭がいい人がいかにも集まってそうな学科だ。
その学科に推薦枠で入学した梛神。
頭がいい学校がこんな頭の悪い人間を入れるなんて…バカにしたいのかしら。
なんて考えながらも、推薦でタダで入れるならそれに越したことはない。

かなりの不安を胸に学校へ向かっていった。


am,9:00
私立星空学園に着いた。
バスの中からたくさんの人が降りてきた。
その人達の手には梛神と同じ推薦者の手紙。
梛神が乗っていたバスは個室風になっていて何人乗っているだとかは判らなかった。
「え…」
思わず声が出た。
その人達はかなりのヤンキー揃い。
「特別学科ってバカの集まりなの!?」
なんて、失礼なことを考えながら指導の先生に連れられ、体育館に集められた。

「それでは、これより入学試験を行います。」
!?入学試験!?
会場はざわめきだした。
試験なんて聞いていなかったから。
「んなこと、誰もいってなかったじゃねーか!!」
騒ぎ出す大柄な男子。
「試験と言っても、筆記とかではない。
ただ、このドアをくぐっていただく。」
そう言って先生はドアを指さした。
白くて綺麗な扉。
ただ、その扉がそこにあるだけ。

「ハァ!?なめてんのか?」
男子生徒は先生の胸ぐらを掴んだ。

「ただ通れば合格なんですよ?」

なんて先生は言う。

「あぁ、とーってやらーっ!!」

そう言って男子生徒はドアをくぐった。



バチバチバチッ




会場中に響き渡る電気の音と…




「ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」



男子生徒の断末魔。


一瞬で会場は沈黙と恐怖に怖じ気ついた。


不合格者は丸焦げにされる。


皆が同時に理解した。

「次の方?」

先生は何ともない顔でいう。
次、受験番号1番。
金髪の女子生徒。
さっきまで余裕をかましながら、ネイルしていた彼女だか…

今は顔が真っ青で今にも倒れるんじゃないか?と思うくらい震えている。

「どうぞ?」

先生はドアを指さす。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

そう言って泣きながら逃げていった。

「まったく…今年は合格者はいないな。」
ボソッと先生は言い放った。

毎年これで合格者が出るのか?なんて梛神は思っていた。

「次の方。」

次。
心臓がドクンとなった。
受験番号2番は梛神だ。

梛神はドアの前にたった。
かなりの冷や汗。
失敗すれば死ぬ。不合格者になる。
高校生活いきなりの選択肢すぎるけど、今決めないとダメ。

先生が声をかける。
「大丈夫ですか?棄権し…」
「もう、引き返せませんから。」
先生の言葉に割り込んで、梛神は言葉を放った。

そしてドアを開けて潜る。

梛神は強く目をつぶる。




バチバチバチッ。





電気の音がした。