嘘つきキャンディー


「…本当にゴメン。」


私は俯いたままなにも言わない野々宮さんにもう一度謝って、カメ男のカーディガンの裾を引っ張った。


「カメ男、早く帰ろう。」

「…うん。」


野々宮さん達を置いて自分の靴箱まで行くと、靴を引っ張り出す。

まだモタモタしているカメ男の腕を掴んで、私達は校舎を出た。





校舎を出てしばらく歩いたところで、私は一度大きく深呼吸をした。


「はぁ~…。何か疲れた。」

「波瀬くんってモテるんだね。」

「ていうか、モテるんだろうけど…。
アイツ彼女いたのかよって感じだわ。」

「…なるほど、そういうことか。」


カメ男は納得したように頷いて、私の左頬に目をやった。


「じゃあこの左頬は、野々宮さんがやったの?」

「まぁ…。」

「大きい絆創膏。」

「へっ?!」


カメ男を見ると、さも愉快そうに肩を震わせて笑っている。


大きい絆創膏って…、


「昭和のわんぱく坊主みたい。」

「なっ、何それ!!」


まだ笑っているカメ男は無視して、私はリュックから鏡を取り出した。

左頬を映して見てみると、そこには正方形の大きめの絆創膏が貼られている。


普通のでも恥ずかしいのに、このサイズは…!


「あぁもう、矢野ぉ~…。」

「矢野?」

「矢野梓だよ!打(ぶ)ったのは野々宮さんだけど、絆創膏は矢野!!」

「あぁ。あのイケメン?」

「そうだよ!」