嘘つきキャンディー


つまりは面倒なんだよね…

なんて思いながら野々宮さんを見ると、ついには泣き出してしまっている。


『ほら、言いたいこと言ってやりなよ。』

『ののが泣くことないよ。あのサイテー女が悪いんだから。』


勝手に盛り上がって言いたい放題言い出した外野達にも、私はいい加減帰りたくなってきた。

私の隣では、完全に関係ないのに巻き込まれてしまっているカメ男が、『野々宮さんって“のの”って呼ばれてるんだね』なんてどうでもいいことを呑気に言っている。


責任を感じないわけではない。

けれど野々宮さんの周りのこの人達は、私と彼女をどうしたいのだろう。


もう終わったことに、野々宮さんは本当に何か言ってやりたいと思っているのだろうか。

女子特有の、“私だけはあなたの味方よ”みたいなこのお節介な空気が苦手だ。


「カメ男、もう帰ろう。」

「いいの?」

「いいんじゃないかな。
そもそも騒いでるのは外野だし。」


そう言ってから後悔した。


また挑発するようなことを言ってしまって、案の定さらに外野がギャーギャー騒ぎだす。


もうダメだ。これクセになってる…。


私は自分のこの性格に若干諦めにも似た感情を覚えながら、まだ煩い外野は無視して、俯いたまま泣いている野々宮さんへ少しだけ歩み寄った。

ほんの少し近づいただけなのに、野々宮さんはその細い肩を揺らす。


さっき私を呼び出してビンタまでした人物と、とても同じとは思えない。


本当は怖かったのだろうか。


「野々宮さん、ゴメンね。」

「…っ、」

「今のは嫌味じゃないよ。
波瀬くんのことだけど、あの人私のこと本気じゃないから。」


言ってて虚しくなるけど、これは本当のことだ。

野々宮さんが泣く程私はいい女じゃないし、波瀬くんも立派な男じゃないと思う。