ていうか顔ってどうなの?

そもそも波瀬くんから告ってきたんだから、私にキレるのは違うでしょ。


なんて、今頃野々宮さんに対する不満が沸き上がってきた所で、頬に何かぺたっとした感覚がした。


「はい、できましたよ。」

「え、何…」

「絆創膏。」


………は?


自分で左頬に触れてみると、確かに絆創膏のようなツルツルとした感触がする。


周囲からは嫉妬や羨望の眼差し。

また違った意味で、女子の中に敵を作ってしまっただろう。


「あー…、ありがとうございます。」


私は苦笑しつつもお礼だけはちゃんと告げて、その場をそそくさと後にした。





自分のクラスの教室に戻ると、まだ僅かに生徒が残っていた。

そんな中、無断で私の席に座ってスマホを弄っている後ろ姿に声をかける。


「まーたゲームしてる。」

「あ、真名子(マナコ)。」


振り返った彼女は、黒く艶やかな長い髪を揺らして笑った。


彼女は亀尾凛々(カメオ リリ)。通称カメ男(カメオ)。

親友…、とかっていうのとは違うかもしれないけれど、間違いなく家族の次に私のことをよく知っている人物だ。


そんなカメ男とは、別に約束をしているわけでもないけれど、何故か毎日登下校を共にしている。

そのせいかこうして、どちらかが遅くなれば必ずどちらかが教室で待っているのだ。