眼鏡越しの恋

教室に戻ると、周りの視線が痛いくらいに刺さる。
でも憮然とした俺に話しかけてくるヤツはいないから、そのまま席に座った。


そこにはなぜかまだ、司がいて。
すっかりその存在を忘れていた俺は、とりあえず一言、「わりぃな」と謝った。


「・・・・・アレがお前の言った“本当の宮野”ってことか」


「あ?」


司が俺の目をじっと見て、呟いた言葉の意味がすぐに理解できなくて、訊き返した俺に司はニヤリと口角を上げた。


「お前が“ランチ放送”の時に言ってただろ。『本当の宮野に気付いても手を出すな』って。それってあの宮野の素顔のことだったんだ。そっか、なるほどなぁ。わざわざ全校放送で牽制するだけのことはあるってことか。“残念”なはずの宮野が、本当はあんなに美人って、反則技もいいところだもんな」


「あぁ!?」


ペラペラと饒舌に話す司に苛ついて、睨みつけるけど、コイツにはまったく意味がないらしい。
苛つく俺に更に可笑しそうに笑った。


「さっきの匡もいつもと全然違うし!宮野の前ではお前、あんな風なんだな。いやぁ、いいもん見たなぁ」


「・・・司、お前うるせぇ」


「でもいいんじゃねぇ?匡もただの男ってことで。嫉妬心も独占欲も丸出しのお前、人間らしくて笑えるけど、いいよ」


「・・・・・お前、マジ黙れ」


遠慮の欠片もない司の言葉に、俺はこれ以上ないほど眉を顰めて低い声で呟いた。
でもそんな俺を司は余計に声を上げて笑い飛ばした。