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次の日、重たい気持ちで私は学校へ登校した。
昨日のことが夢だったみたいに思う反面、瀬能君が言った言葉は私の耳から離れてくれない。
瀬能君がどうしてあんなことを言ったのか、何をしたかったのか・・・全然わからなくて。
混乱させられてすごく嫌なのに、でも彼が好きだという気持ちは薄れない。
それどころか、彼の言葉を嬉しいと思っている自分がいる。
それがどんなに愚かなことか、わかっているはずなのに瀬能君に『綺麗だ』と言われたことが堪らなく嬉しかったんだ。


私が“綺麗”なはずなんてないのに。


瀬能君とはクラスが違うから滅多に会うことはない。
瀬能君は休み時間も教室から出ることはあまりないから、私が廊下をウロウロしない限りバッタリ会う確率だって低い。


今はそのことがすごく有難かった。
瀬能君と顔を合わせてしまったら、どんな顔をしていいのかわからないから。
普段は前髪とメガネで隠している表情も今は彼の前で隠し通せる自信がなかった。


こんな私、らしくない。


自分の顔も表情も、心の中の感情だって隠すのはお手の物なのに。


瀬能君の前ではそれができそうにもないなんて・・・ホント、らしくなさ過ぎる。