コウタにおばさんが帰って来ないこと。
カケル君がその間、戻って来ることを伝えた。
コウタはまたパソコンに向かっている。
チラッとこっちを見ると、露骨に嫌そうな顔をした。
「もっと嬉しそうな顔したらいいのに。うざい!」
コウタは低い声で、静かに言った。
コウタの言葉が胸に突き刺さる。
信じられない! コウタって。
うざいとか言わないでほしい!
コウタはなんなの?ホントにもう。
あたしは誰が好きなの?
カケル君?コウタ?
わかんない。
コウタは冷たいし。
カケル君にはフラれてるし。
どっちもダメってこと。
だよね。
悩んでても仕方ないのか。
あたしはコウタの背中を見つめながら、そんなことを考えていた。
ため息1つついて、何も言わず部屋を出た。
自分の部屋に戻り椅子に座って、頬杖ついた。
自分がどうしたいか……。
考えてみたけど、今は答えが出ない。
わかんないわかんないわかんない!
自分のことなのにわかんないなんて、どうかしてる。
カケル君もコウタも、どっちも好き。
カケル君にはフラれてる。
コウタは冷たい。
じゃあ、もし。
もしも、もしもの話だけど。
カケル君があたしのこと好きって言ってくれたら?
あたしはコウタのことはスパッとやめて、カケル君と付き合える?
この質問に悩む自分がいた……。
悩んでることに自分で驚いた。
少し前なら悩むことなく付き合えるって絶対付き合うって宣言できたのに。
もうすっかり、気持ちが変わってしまっているんだな。
今は素直に飛び込めない。
カケル君と付き合う自分を想像できなくなってる。
そんなことあるわけないって、言い聞かせてきたから。
カケル君よりコウタが好きなのかな……。
コウタは付き合おうって言われて、はじめはやだったけどだんだんその気になって。
コウタの優しさとか、一緒にいて自然な空気とかがすごくいいって思えるようになった。
でも今はとても拒絶されていて、コウタの気持ちは全く見えない。
悩んだけど、特に今すぐ決めなければいけないこともないからゆっくり気持ちと向き合っていけばいいね。

