ホームにいると、コウタが走ってやってきた。
息きらしてる。
「一緒に帰ろう。」
「うん。」
あたしは快く返事した。
「アニキ帰ってきたよ。」
「知ってる。」
「あたしもうカケル君に恋するのやめたの。」
「知ってる。」
「なんで知ってるの?」
「話してるの聞いたから。」
「立ち聞きしてたの?」
「ちげーよ。窓開けてたら聞こえてきたの。」
コウタの話に納得してうつむいた。
田舎だから静かで、本当によく聞こえるのだ。
「ねぇ、あたしのこと避けてたの?」
「避けてない。」
コウタとちゃんと話すのは夏以来。
あれからコウタは、会ってもそっけない挨拶してすぐ去っていく。
あたしも、特別話しかけたりしなかった。
なのであたしたちの距離はあいていた、ように思うのだけど。
コウタは今あたしの隣にいる。
なんで?
「そういえば、友達は?カラオケ途中じゃないの?」
「うん、さくらに会うの久しぶりだったから、途中で帰ってきたよ。」
コウタはさらりとそういうことを言う。
ぶっきらぼうなのに、へんな奴。
「隣に住んでるんだからいつでも会えるのに。変なコウタ。」
あたしは言葉を失った。
コウタのペースにいまいちついていけない。
「そういうのと違うじゃん。」
電車に揺られ、ガラガラの車内。
1人分の席をあけて隣に座るコウタが、突然間を詰めてきた。
そしてあたしの右手をつかんだ。
コウタの手は大きい。
「な、 なに?!」
あたしは大きめの声で聞いた。
「なあ、俺たち付き合わない?」
コウタはサラッと言った。
「え? 付き合うって。」
「アニキのことやめたんなら、いいじゃん。 さっき一緒にいたあいつ、彼氏?」
「彼氏じゃないけど、 急にそんなこと言われても。」
コウタはあたしの手を握ったまま。あたしも抵抗できずにいたら、貝殻つなぎになっていた。
私の人生初めての貝殻つなぎ。憧れていたシチュエーションとはほど遠い。現実はこういうものだ。
コウタは残りの10分間電車の中であたしにもたれるようにして座って、心地良さそうだった。

