それからカケル君は黙ったままだった。
あたしも知らない歌に耳を傾けて、窓の景色を眺めていた。
待ち合わせの駅まで車で30分ほどかかる。
田園風景ばかりが続く。20分くらいはしるとビルが増えてくる。
こっちの方はあまり来ないからあたしはよくわからない。
カケル君の車が交差点でUターンした。
あれ、と思いカケル君の横顔をみた。
ポーカーフェイスのカケル君の表情から考えは読み取れるはずもない。
はじめはどうしたんだろうと、思ってたけど。
また田園風景が戻ってきてさすがに駅から離れすぎだと心配になった。
「カケル君、どこ行くの?」
カケル君は赤信号で停まると、あたしをみた。
「今日行くのやめろよ。」
真面目な顔で言った。
「え?」
ってあたしが聞き返した時には信号が青になりカケル君はまた前を見て走り出した。
待ち合わせの時間まであと20分ほどある。
「カケル君、なんで?」
あたしはわけがわからなくてカケル君に聞いてみた。
答えてくれなかった。
待ち合わせ場所から離れ、家の方でもない山を登った見晴らしのいいところに車を停めた。
駐車スペースが10台分ほどあるが停めてる車は他になかった。
あたしは諦めてももちゃんに断りの連絡をした。
ダブルデートは気が進まないこともあって断ったらスッキリした。
車から降りると風が気持ちよく吹いていた。
「見晴らしいいねーこんなとこ初めて来たよ。」
カケル君は気まずそうにあたしの隣に来て太い丸太でできた柵に腰かけた。
「行かなくてよかった?」
申し訳なさそうに言うカケル君。
「ほんとは行きたくなかったから。」
「そっか……。」
「カケル君心配してくれてるの?」
「え?」
「あたしのこと。変な男に引っ掛からないかって心配なんでしょ?」
「………………。」
「河瀬君の時もやだって言ってたもんね。でも、あたしも男見る目に自信はあるわけじゃないけど。経験もしてった方がいいのかなって思って。考えるより実践してみようっておもってるんだよ。」
カケル君を見ると、うつむいてて表情は見えなかった。
「さくらって鈍感なんだな。」
カケル君は少し怒ったような顔で言った。
「え、なんで?」
あたしは目が点になった。

