私は産まれてくるべきじゃなかった。
産まれても女じゃだめ。男が良かったの?

隣の部屋に行っても母親が泣いている声が聞こえる。

「選ばれなくては意味がないの。
あなたは、わかってくれるでしょ……!!」

「ああ。
わかるから。
来年、また今度選ばれたらいいことだろ」

「今度なんて、もうきっとないのよ!!」

あなたならわかるでしょ!?
と、強く言葉を荒げ叫びたりないのか、バーンッと何かが当たる音が響いた。

扉を開け父親のもとに行き今の状況を確かめたい。
でも、怖い。
小さな姿の良乃に何ができるだろう。
自分が行って母親を刺激するかもしれない。
扉に手をかけている手が震えていた。

「チャンスはだんだんと減っていくのよ!!
いいの?
よくないでしょ!?」

「とにかく、落ち着け」

「いや……いやよ」

また、バンバーンッと何回か何かに当たる音が響いた。

「良乃、来なさい」

「ママは?」

扉を開ける勇気もなく良乃は扉越しに父親と話す。

「来なさい」

母親のことは答えず良乃がいる扉を強引に開け良乃の体を引き寄せる。

「最後の母親の顔だ。
よく見て、覚えておきなさい」

そこにいたのは……――

息を呑み父親を見上げる。