「今年こそ、僕の子供が選ばれるだろ」

「いやいや。私の娘です」

「やばんな人から産まれた子は選ばれなくて俺と妻の子が選ばれる。
確信があるからな。
な、良乃(りの)」

「え、えぇ……そう、ね……」

選ばれることは良いこと。
物心ついたときから父親や母親、両親に聞かされ育った。
あの『御方』に良乃が選ばれなかったときの母親の顔が思い出される。

「どうして!!
私の子供のどこがいけないの!!」

「ひっ……マ……ママ」

頭を激しく振り回し良乃を怖い顔で睨む。

「おい」

「なにが、選ばれるよ!!
あなたが女なら選ばれる確立が高くなるって言うから私は女を、良乃を産んだのよ!!」

父親は暴れる母親を落ち着かせる。

「良乃。
お前は隣にいってなさい」

「はい……」

「あなたの言うことなんて……。
今年は男ばかりなんでしょ?」

「やめないか」

しゃがみこみ泣き出す母親。


「……」

娘の良乃が近づこうとすれば母親は手を振り払う。

「良乃(おんな)を産むなんて……バカなの!!」

「……私……」

「良乃」

「はい……。
パパ」

精神が不安定なんだ。と、パパは言う。
でも、それは違うと思う。
子供ながらそれは薄々、感じていた。