「口の中もベタベタとか嫌よ。爽やかとか、まぁ冷たかったらいいけれど」
唾液を無くせなんてあんまりも無茶でにやにやするのを止められない。
それでも彼は至って真面目に考えているらしい、怒ることも笑うこともせず、ただ一点を見つめている。
私は一抹の不安を感じた。
彼は変な人だ。キス如きでムキになるのだ。
「涼しかったらーーーーなんでもしていいのよな」
「えっ………」
彼は今度はキッチンへ行く。
私はさっと青ざめた。
私はとんでもないことになってしまったと感じぜずにはいられない。
彼の大きな掌にはたくさんの氷。
そして一個口に含む。
その顔は弧を描いて、悪魔を制裁する。
「飼い犬に手を噛まれてください女・王・様」
従順でもないくせに、犬に失礼だろう。
冗談めかした口調に似合わず目が本気で気付けば、唇を奪われていた。

