青の向こう




「例えば対向車がこっちに突っ込んできたとする。すると運転手はほとんど完全に右にハンドルを切る。そうすることによって自分が車に接触する可能性を軽減することが出来るからだ。これはほぼ反射的なもので意思とは関係ないものらしい」


分析的にすらすらと話す彼の言葉は淀みがなく、違和感も感じられなかった。

ちら、と前の席でボディータッチをしながら話す彼女の横顔を見つめる。


私が今まで見てきた"あっち"の人らしくない話し方だと思った。

この人は多分頭が良い。


「でもさ、皮肉なもんだ」

にこりともせず、視線も変えずに彼が言う。


「大切だと思ってるのは確かなのにほとんど100パーセントの確率で人は右にハンドルを切る。そうしたら一番危険な場所は助手席ってことになる」


彼は何が言いたいんだろう。
何を考えてるんだろう。

人の言葉の裏が読めない。

こんなことは初めてだった。


横目でカンベさんんを見るとうっすらと口元に笑みを浮かべていた。

冷笑でも微笑みでも哀愁でもない。

そういう笑みだった。