青の向こう




挨拶でも自己紹介でもなく彼との初めての会話は意味の分からない問題だった。

少し戸惑う私を見ながらカンベさんは私が答えを出すのを待っている。

「助手席、の後ろ?」

つまりカンベさんがいる位置だ。


問題に対して私は疑問系で返答した。

自信はなかった。


謎々なんかは苦手だし、そもそもいきなり言われても考えるのは難しい。


「車高通ってた時にさ・・・あ、自動車学校のことね」


前を見ながら話し出すカンベさん。

恐らくどこも見てないんだろう。


「そこの講師の人が最初の学科の授業で俺らに聞いたんだよ。まあ色んな答えが出たんだけど、俺も同じ所を答えた。今俺が座ってる所」


何が言いたいんだろう。
私はじっと彼を見つめる。


「でも不正解。一番安全なのはそこ」


そう言って彼は私を指差した。

なぜか体の奥がとくとくと音を立てる。

理由は分からない。


「助手席や後ろの席にどんなに自分の大切な人が座っていたとしても、運転手は自分が助かるように反応してしまうらしいよ」