「目上の人には敬語って教えたよね。響子にはきちんとそういうことが出来る子になってもらいたいな。だから気をつけなさいね」
そういうこと、の中に敬語を使う以外のことも含まれているような気がした。
母が叔母に大して敵対心や恐怖心を抱いているのを知ったのは本当につい最近の事だった。
父と離婚してから、そして私がもう子供ではないと判断してから、母は無遠慮に私に叔母の愚痴を言うようになった。
私は父方の親戚達が好きだったけれど、母はそうではなかった。
「私だけが血が繋がってないから、信頼や気軽さなんて持ってはくれないのは当然よね。所詮は他人ってことよ」
遊びに行ったり、食事をしたり、お正月に集まったり、そんな時にいつでも母は一人だけ疎外感を持っていたのだ。
そして育ちのいい家庭で育った父方の親戚達と、穏やかだけど苦労もしてきた自分達とを比べて劣等感のようなものを持っていたのかもしれない。
今になったらそんな母の気持ちが分かるような気がする。
所詮家族には、なれない。



