「けどさ、つい最近も行っただろ?それにあの辺りは幽霊スポットなんかもあるらしいぞー」
私の目の前にある椅子に座る大輝さんが今どんな表情をしているのか分かった。
その言葉に反応して横で頬を膨らませている彼女の横顔も。
ついでに隣にいるカンベさんも盗み見してみる。
寝ていた。
腕を組んで俯き気味に考えるみたいに目を閉じている。
知らない人が隣りで寝ているってなんか不思議な感じだなあ、なんて思いながら私はまだ横にいる男の人を横目で見続けた。
さっきはピアスや名前に気を取られて挨拶を忘れてしまっていたけれど、また言い忘れてしまった。
こういうのは気分が悪い。
小さい頃から礼儀だけは徹底して注意された。
穏やかな父と違って、人にも自分にも厳しい母はいつだって他人の目をしっかりと気にする。
一度だけ、父方の親戚の家に遊びに行った時に酷く叱られたことがあった。
確か私が小学二年の時。



