青の向こう




車がゆっくりと動き出す。


すぐに今度はみっちゃんが助手席からひょこっと顔を出した。

「カンベさん、こんばんはー」

「こんばんは」


この流れで自分も挨拶をしようとした時、また前から声が来た。

「ちなみに今日は朝倉もノリも来ないから俺ら4人だけね」


ハンドルを回しながら話す大輝さんの声は会話よりも運転に集中しているようであまり中身のないようなただの連絡口調だった。

あ、そう。と返事をするかんべさんも何かをしているわけでもないのにからっぽな口ぶり。


もしかしたらこの浮ついた話し方は彼の癖なのかもしれない。

まだ出会って数分しか立っていないのに私は自然とそう思う。
どこかで聞いたことがある口調、とも。


「ちなみに今日はどこ行きたいとか希望ありますかー」

車が右折する。
遠くに目立つ白光がちらついた。


ぼんやりと過ぎ去っていくその街灯を見つめていると、自分にも向けられている質問だということを遅れて分かる。


「高台は?山の上の。夜景が綺麗だし」


みっちゃんのその言葉に大輝さんがうーん、と唸る。