青の向こう




多分、自分でも分かっていた。


「響子ー」

と私を呼ぶみっちゃんの隣には知らない男の人がいた。

大きくて細くて灰色な人だった。


緩んだ口元と光る目がこちらを見ている。

一瞬、とても優しそうな人に見えたけど多分違うような気がした。


「びっくりした?」

くくく、と小さい頃から変わらない食いしばったような笑いをする彼女。

久しぶりに目の前でちゃんと見たら睫毛が長くてちょっとびっくりした。髪も少し明るくなってる。


響子に一番に紹介したくて。
まだみんなに言ってないの。


頬がほんのり赤い。

私はそれがチークによるものなのか分からなかった。


以前だったらそんなのすぐにみっちゃんは照れ屋なんだからって本当だと分かったのに。

それを分からなくなった事に何故かぼさっとした。


隣に立って「響子ちゃんだよね?初めまして」と愛想よく笑う嘘っぽい男の人にもなんだかぼさっとした。


胸の真ん中でぼさっと灰色の物がくしゃくしゃになるような。そんな感じ。