神社に着いた。
その隣にある少し入り組んだ所に自転車を止める。
今日は散歩をする気分にはなれなかった。
どうしても好奇心と興奮が坂を上って行く時間に堪えられそうもない。
それに散歩はあっちですればいいだけの事だ。
出来たら、だけれど。
鳥居の中はやはりひんやりしていた。
といっても涼しい風がほんの少し露出した二の腕を掠めるだけで、太陽の暑さを僅かに弱めたくらいだ。
ちょうど残暑がそろそろ終わろうとする秋くらいの気温。涼の誕生日辺りだ。
夏生まれによく見かける名前なのに弟は9月に生まれた。
人と少し違った角度から物事を見る父が付けた名。
私は羨ましかった。
父に名付けて貰いたかった、とずっと思ってきた。
でも今は思わない。
私は母が名付けてくれた"響子"という名を気に入っている。
それに一生背負っていくものにあの人の陰を感じていたくない。
涼はどう思っているのだろう。
父がくれたあの名前を好きでいるのか。
もうここ何年か、まともに話をしていない。