やがて視界が開けた。


天井がある。

知らない天井だと思った。


いつもの木目が特徴的な木の板ではなかったから。

ぼやけてよく見えないがとても高い所にある天井だ。赤色が滲んで映る。


ぼうっとした頭ではまだここがどこか分からなくて横を見た。

鳥居が見える。


ああ、神社か。と思った。


頭痛がする。

じんじんする痛さだ。


私は顔をしかめたまま無意識に鳥居の向こうを見つめていた。


確かにからっぽな空間がそこにある。


しばらく見ていたら急にある事に気付いた。


家がない、と。

確かに古びたボロボロな木造の一軒家があったはずなのに。


"今"はここにない。



その瞬間、頭の歯車が急に動き出した。


すぐに起き上がった。

そのまま辺りをきょろきょろと見渡す。


蝉が五月蝿い。

気付いたのはそれだけだった。


彼女はいなかった。