青の向こう




「あ、それから今は誰もいないから大丈夫だよ。弟はおばあちゃんちだし」

突然の声に壁を撫でていたのがばれたのかと一瞬焦った。


そうなんだ、と適当に相槌を打ちながらリビングの壁に貼ってあるカレンダーを見る。


8月8日、水曜日。


やっぱり現代と同じ日だ。

どうやら本当にぴったり過去に来ているらしい。


そしてこの日から大体お泊りをしていた事に気が付いた。

大体七日間泊まって最後のお盆の日には集まった親戚達と宴会をやり、両親と共に自宅に帰る。

それが毎年だった。


だから今頃きっと祖父と祖母が布団を敷いてくれているだろう。


しかし少し気掛かりな点があった。


何で響ちゃんは今この家にいるんだろう。


あの家に泊まる一週間の間に家に一旦戻るなんて事があっただろうか。

大抵は買い物に祖母が連れて行ってくれたり、庭の家庭菜園を綺麗にする手伝いをしたりするだけだったはずだ。


忘れ物?

面倒くさがりな私がわざわざ一人で戻ってくる程の忘れ物なんてあるのだろうか。


「お姉さん、こっちこっち」

その声が思考を遮った。

カレンダーから目を逸らすと彼女が手招きしている。