青の向こう




クリーム色の壁にくすんだ深海のような色の屋根。

玄関のドアノブも一般的な回すタイプではなく、細工が施された取っ手のようなものだった。

中は畳みの部屋もある和風な作り。


そんな洋風な外見とのギャップも好きだった。


今、その私の家が消しゴムくらいの大きさで向こうに見える。


それを横目にマンションの隣にある坂道を上りあげる頃には体中が汗でぐっしょりだった。

タオルで何度も汗を追い掛けるけれど、間に合わない。

服に滲む。


響ちゃんも同じような様子らしく、げっそりした顔で、目の前にある坂の上の我が家を見上げていた。


全く何でこんな暑い日に近所を散歩しようなどと思うのだろうかと我ながらうんざりする。


しかしそうは思いながらも結局次の日にはまた炎天下の中を歩いて行くのだ。


相当な面倒がりな筈なのに、頑固な部分がそれを奮い立たせるらしい。

私はこの性格が得なのか損なのか、未だに分からない。


と、そこである事に気付いた。


時空を跨いでいるし、もしかしたら夢かもしれない。

けれど、私はもう団地を一周した事になる。

つまり今日の散歩は終了だ。


知らず知らずの内にそうなった事が不思議と可笑しくて私はくすりと笑った。