青の向こう




初めて入った部活動。

小学校のクラブ活動とはまるで違う徹底された上下社会。

特に女の園と呼ばれる吹奏楽部においてそれは絶対だった。


一瞬でも敬語を忘れようものなら調子に乗っていると言われ、校内でスカートを短くしようものなら呼び出されたりもした。


ほかのクラブでもそれは同様のようだった。

実際、バスケ部に入っていたみっちゃんもそれが理由で辞めてしまった。

先輩達が卒業するまで待てなかったのだ。


私自身も年上というだけで少々過敏なくらいにそういった事には気を配っていた。


みんながみんな、年の差を気にしていたそんな時代の私なのだろうか。


「…あの、また」


控え目に、けれど 慣れてきたのか口調を強めて注意を促す彼女。


また、の意味は分かっていたから、すぐに赤く染められたハンカチを膝に当てた。

止まらない血に僅かに苛々を含む手で抑えた為つい力が入ってしまった。

生々しい傷口からつんとした痛みが走る。


「私も最近学校のアスファルトでこけちゃって。膝ってなかなか血が止まらないから面倒くさい」

その最近を思い出しているのか、顔をしかめているわたし。


一方こっちの私も今感じている痛みと微量の煩わしさでしかめた眉が上につんと上がった。


「うん。面倒くさい」

懐かしさを含んだ微笑みが漏れる。

面倒くさい、は私の一番の口癖だった。