流れる赤はツウッと下りてきて靴下に到達しそうだ。
慌てて持っていたハンカチで行く手を塞ぐ。汗を拭く為に持ってきた少し大きめの柔らかいハンカチ。
血は布に受け止められて、じわりと滲んだ。
お気に入りだったけれどしょうがない。
そのまま血が通った道筋を辿り、血を綺麗に拭きとった。
傷口からはもう出血する様子はないが、また歩いているとどうなるかは分からなかった。
膝というのがなかなか悪い条件だった。
一先ず、靴下や白い運動靴を汚さずにすんだことに対して安堵の息を漏らす。
「こけたんですか?」
いつの間にか彼女との距離は二メートルに縮まっていた。
顔を上げると目が合う。
視力の関係でうっすらぼやけていた顔が輪郭まではっきり分かった。
まるで焼けていない白い肌。
えらから顎にかけてのシャープなラインが逆三角の輪郭をする。
鼻はすっと立ち上がった形ではなくて少し低い。
そして小さめの控えめな唇。
黙って居ればクール、という表現にぴったりな顔立ちと雰囲気。
すらりと細い足も、決して大きくはないけれど睫毛にボリュームがある目。
自分で自分を褒めてるみたいな表現だけど、本当にそうだった。
この頃の私を、私は好きだった。



