青の向こう




ワンピースの私は小首を傾げたままこちらを真っすぐ見つめていた。


少女が初めて声を放った、ようだ。

ぽってりした小さな唇が動いたけれどよく聞こえない。

頭上の蝉が邪魔をしている。


え、と私は少し大袈裟に口を開き、小首を傾げてみた。

しかし少し眉をしかめて、どこか怪訝そうな顔になってしまった。

鬱陶しい蝉のせいだ。


彼女の方もほんの少し眉をしかめていた。

しかしこちらは困ったような顔だ。

そしてもう一度繰り返す。もう少し大きな声で。


「ほら、血が。血が出てますよ」


「え?」


「膝です、膝」


びっくりして自分の膝を見下ろすと、坂道で転んだ時強く打った方の膝から血が下に向かって一筋の線を引いていた。

今頃になって滲んだ血が流れ出したらしい。