青の向こう




目が合ってから随分長い間、ぴたりと時間が止まっているような気がする。


合格発表を見に行ったあの時と同じ感覚だ。

辺りの音も声も景色も全部ぼやけて、黒い四桁の数字だけが私を見つめている。

数秒が経過してやっとその数字が何を意味するのか理解し、歓喜の声をあげる。

ようやく周りも鮮やかに色を持つ。


しかしその沈黙は実際たったの三秒だった。

しかも歓喜の声は上がらない。

代わりに素っ頓狂な声が飛び出た。


「あっついねえ」


言った後もしばらくぼうっとしていて、今自分が何を口にしたか分からなかった。


あまりに非現実的な出来事に心も体も対応しきれていないようだった。


二秒後に気付いた。

また口癖を言ってしまった、と。


私はどうも極度に緊張し、焦ると、口が勝手に「あついねえ」か「さむいねえ」かを喋るようだった。


中山君との初デートもやたら「さむいねえ」を連発し、時々訳が分からなくなって「あついねえ」をポロリと漏らす。

言った後に激しく紅潮して本当に暑くなるのだけれど。

あれは寒さがピークを迎える二月頃だったろうか。