確か虫の声だったはずだ。

当時の私が唯一、夏で好きだったのは。


つまり私は夏という季節が好きではなかった。

理由は色々あったと思う。


冬生まれだから暑いのが苦手だとか、小さい頃から慕っていた親戚の人がなくなったのが夏だったからだとか、母の作る料理が素麺ばかりになるからだとか。


思い出してみればみるほど特に大きな理由はない。


それは西瓜を食べる際に西瓜の種が煩わしいように、黒く小さな"嫌い"の一粒一粒がどうも煩わしく、西瓜を食べるのが面倒になるのと同じようだった。


実際、西瓜も嫌いだったし。