ホームルームが始まって五分ぐらいがたった。私が外を眺めていると、隣でイスを引く音がした。

「奈美…!」
優里香が私を呼ぶ。なにかと思って隣を見ると…。嫌な予感的中。
隣はまさかの、竜斗君だった。
茶色い髪をワックスで整えて、キラキラ光るピアスをしている。どう見てもヤンキー…。一年生のときから窓を割ったり、喧嘩したり。かなりヤンチャ。
私は、竜斗君の性格は知らないし、話したこともたいけど、ちょっと苦手意識をもっている。

いろいろ考えているうちに、ホームルームが終わって休み時間になった。
竜斗君は先生に連れられてどこか行ったらしい。多分、指導室…。
隣がヤンキーなんて、大丈夫かな?
「奈美、隣やばいじゃん」
「そうなんだよー。沙羅、かわる?」
「やめてよ、死んじゃう」
そんな冗談を言いながら、新しいクラスの雰囲気を感じていた。

…ドンッ!
みんなが話していると、いきなりドアがあいた。
「マジ、あの担任むかつくわ!」
「竜斗、今日遊ばねー?」
「竜斗ー、お前席どこよ?」
竜斗君たちがこっちに来る。やばいやばいやばい。しかも拓也まで!
あいつ、竜斗君と仲良かったっけ!?
「優里香どーする、やばいよ?」
「あたしは、裕太いるし、普通かなぁ」
そっか、優里香は裕太君がいるから普通に感じるんだ。
「うわ、竜斗、奈美の隣?絶対いいことないわ。どんまーい(笑)」
拓也が私の机に手を置きながら、竜斗君と話している。拓也マジで許さない…!
「どんまいとか、なによ」
ちょっとキレ気味で言った。
「お前、名前奈美って言うんだ。よろしくっ!」
…え?
竜斗君がそう言って握手をしようとしてくる。いやいやいや、そういうキャラですか!?
「握手しちゃえー!」
いつの間にか沙羅まで…!
「あ、はい。よろしくお願いします…」
「敬語とか。タメでいいっしょ。」
握手をしたときの竜斗君の笑顔はとても輝いてみえた。

…キュン。


竜斗君たちはまた、どこかへ行ってしまった。
イスに座ったまま、優里香のほうへ向くと、優里香は裕太君をまだ見ていた。
「おーい」
そう言って優里香の目の前で、手をパタパタすると、優里香はハッとして、
「あ、ごめん奈美!裕太見てたぁ!」
…恋する女の子っていいなー。
裕太君を見ていた優里香の顔は、幸せそうだった。
「ね、ねぇ、優里香?
竜斗君って彼女とかいるの?」
「ん?わかんないけど、多分いないと思うよ。どうした?気になっちゃった?」
「え、いや、ちょっと。さっき笑ったときにキュンってしたかも…」
そう、さっきキュンってしちゃった。
かっこいいっていうか…
魅力的な笑顔。
「そうなんだ!応援するからね!
いつでも相談とかしてよ?」
「う、うん、ありがとう!まだわかんないけどね…」
自分でもこの気持ち、よく分からない。恋なのかな?

そんなことをしているうちに、帰る時間になった。私は、沙羅にも竜斗君のことを伝えた。
「へー、ついに、奈美も恋か!」
「ついに、って。まぁそうだけど…。まだ今日話したばっかりだし、わかんないよ。沙羅は、竜斗君どう思う?」
「ヤンキーだよね、でも、いいやつなんじゃない?」
「…そっかぁ。」
私の家は学校から目と鼻の先。ついでに、沙羅の家は私の家の隣の隣。
今日は疲れたし、お互い遊ばずに家に帰ることにした。


これが、私と竜斗との出会い。