蓮side<

放課後、下校しているとよく見知った後ろ姿を見つけた。周りに群がっていたうざい女子達にごめん、と言ってそいつの方に走る。

俺が声をかけると向こうは威嚇的な目で睨んできた。
「何か用あんの、蓮?」
「そうツンツンしないで下さいよ。仮にも僕たちいとこ同士じゃないですか、快。」

俺がそう言うと快は余計に嫌そうな顔をした。

「その喋り方超キモい。目立つから話かけんな。」

そう言ってすたすたと俺をおいて歩いていく快。俺はめげずに快の後について歩きながら話かけた。

「別にいいじゃないですか。一緒に帰りましょう。」

快はまた睨んできたが、それ以上は何も言わなかった。多分俺の事情も察してくれたのだろう。だてにいとこを15年やってる訳じゃない。

無言は辛いので、話題を変えて話かける。

「そう言えば、あのお友達は一緒じゃないんですか?って、うわっ!」

ピタッと快の足がいきなり止まってぶつかりそうになった。そのままくるっとこちらの方に向き直る。

「ハルセは今日用事があるって言われたの!
てか、あの子に近づくなよ!手ぇ出したら承知しないから!」
そう言って、真っ赤になって俺に詰め寄る。
お前はあいつの保護者かよ!?

「はいはい、わかりました、わかりました。」

そう言って、どうどうと快を宥めると快はふんっと言って回れ右をするとまたすたすたと歩き出した。

快が向き直ったところで俺が言う。
「そう言えば、僕と坂口さん学級委員長になりました。」
言った瞬間ひゅっと音がして俺の耳の隣に快の足が降りあげられ、ピタッと止まる。

俺の顎をつーっと汗が流れた。
回し蹴りの格好のまま快が背筋が凍るような声で言う。

「あんたがそうした訳?」

目付きはさっき以上に鋭い。殺される!

俺は必死にブンブンと首を横に降った。
「僕じゃなくて先生が。」

周りを通りすぎる生徒たちが唖然とした表情で通り過ぎていく。いや、誰か助けろよ!

「ふーん」

快はそう言うと以外とあっさり足をおろした。
あ、ちなみに快はいつでも動けるようにスカートの下にはスパッツをはいてる。だからおいしいショットとかは全然なかった。

まぁ、俺快のこと女として見たことないけど。
普通に怖ぇじゃん?

快が足を下ろして、安心した瞬間‥‥
ゴスッと脛を蹴られた。

「っ!!」
あまりの痛さに声を殺してしゃがみこむ。

「今回はこれで許してあげる。」
「快‥‥‥てめえ‥‥」
「ここはまだ学校だよ♪夏木君♪」
「っ!」

そう言うと快は得意そうに笑った。チクショー。

「マジ覚えてろよ」
周りには聞こえないくらいの低い声で言う。快は何事もなかったように俺を無視してまた歩き出した。

とは言え、快がいないとまた女が寄ってきそうだ。

快はまぁ、普通に美人だと思う。ムカつくことに。
で、そういう女が近くにいると他の女はあまり寄ってこなくなるのだ。

俺は快の後を追って歩く。
でもやっぱムカつくので、ちょっと言い返したくなった。

「そのハルセちゃんとやらも男に詰め寄られて悪い気がする訳でもないんでしょう?休み時間にも男に誘われてたようですし。」

次の瞬間、ダンと壁に押さえつけられた。

「いったあ」
「それどういうこと?」

快が震えながら聞いてくる。そこにはさっきと同じような怒りと一緒に焦りや不安が滲んでいた。

「いや、休み時間に坂口さんが3組にいた時あったっしょ?
そんとき男子二人組になんか言われてたんだよ!相手しろとか、体育館裏がどうとか。」

快の必死の形相に俺も必死になって答える。あ、ヤバい素の話し方だ。

「どういうやつ?」
「えっと、金髪の背が高いのと黒髪の坂口さんくらいの身長のやつ。」

なんだ?何で快はこんなに焦ってるわけ?

「あいつらか‥‥」

快はそう呟くと俺を離して走り出した。

「え、ちょ、快?」

突然走り出す快に慌てて声をかける。何か置き去りにされたみたいでカッコ悪い。

「あー、もう!」
俺は頭をガシガシと掻いて。快の後を追って走り出した。

今が放課後で良かった。人が多いと大変なことになるとこだった。
そう思いながらがむしゃらに走る。

(俺なにしてんだろ?)

もう春先だが相変わらず、まだ寒い日が続いている。
日が沈むのも早い。

窓の外は真っ赤な夕日が半分だけ顔をだし彼らの様子を見ていた。