遥紗side<

何でこんなについてないんだろう。
まさか隣の席が夏木君だったとは。

「うー‥‥」

一人で頭を抱えて唸る。
周りから視線を感じるけど、そんなのを気にしてる余裕はない。

そして、気のせいか女子の刺すような視線も浴びている気が。まぁ、理由はわからないではないけど。

ちらっと隣の席の夏木君を見た。
ほんと鼻血が出るかって思うくらいかっこいい。

少し茶色く染めた短めの髪がサラサラしてる。高くて筋がスッと通った鼻に二重なのにキリッとした切れ長の目。どっかの国の王子様って言われても余裕で納得できる。

ボーッとそんなことを考えながら、夏木君の方を見ていると、不意に夏木君も私の方を見てきた。

とっさにすぐ目をそらす。何か気まずい。
私は当分この席でほんとにやってけるんだろうか。楽しみにしてた高校生活なのに既に不安でいっぱいだ。

机の上をみてうつむいていると突然先生から「坂口」と名前を呼ばれた。

「は、はい!」
「分かってないのに、はい!じゃないだろう。ちゃんと話聞いてなかったのか。」

先生が呆れたように言う。クラスのあちこちから笑い声が聞こえてきて超恥ずかしい。
顔を真っ赤にして言う。

「すいません、聞いてませんでした。」
「入学してすぐだからって気を抜くなよ。もう1回言うぞ。このクラスの委員長を首席と次席の夏木と坂口にしてもらおうと思うんだが、いいか?」

先生が一気に説明する。実は次席入学な私でした。まる。

いや、そんなことよりも今なんて言いました?委員長?私と夏木君が?

「まぁ、成績いいやつにやってもらうのが一番だからな。しかも隣の席同士なんて調度いいじゃないか!なんだ、嫌なのか?」

嫌に決まってんじゃん。
めんどくさいし、何より夏木君ととか考えられない。

私が断ろうとした瞬間、夏木君が口を開く。
「いいですよ。僕と坂口さんの二人でですね。」

そう言って、笑顔で返事をする夏木君。

何であんたが私の分も勝手にOKすんの?
いらっとして、立ち上がって断ろうとした瞬間‥‥

キーンコーン、カーンコーン

ホームルーム終了のチャイムが鳴った。

私の言葉はかき消され、「じゃ、そういうことで頼んだぞー!」と言って先生はすぐに出て行ってしまう。

キッと隣の席の夏木君を睨むと、彼はニヤニヤと笑っていた。めちゃくちゃ腹発つ。

しかも、教室のあちこちから女子の視線を感じる。
私のせいじゃないって!

なんだか自分ではどうしようもなくて、私は快のいる3組に向かった。
教室のドアを乱暴に開ける。

快さん、どうやら神様は意地でもあなたとの約束を守らせないつもりのようです。