話しても無駄にしかならないのに。



それでも真剣な表情の湊の姿から目を逸らすことも出来ない。



「話しても意味がない気がします。彼女はあなたを盗られることが嫌でここまでする人ですから」



「とにかく、また日を決めて連絡する。それからちゃんと俺らの話をしよう」



あたしが止める間も無く、湊はサッと出て行ってしまった。ずっと握りっぱなしだった紙をもう一度広げる。



辞令 小坂湊。
9月1日付でPartenza
チーフマネージャーに任命する。



そう書かれた紙の下には手書きで尚、現チーフマネージャーの井沢舞花に置いてはPartenzaの専属プランナーとすると書かれていた。