「大事なお客さまは、みずからおもてなしするものだと、母に言われているの。
近衛のお義母さまも、多くの方をご自宅にお招きしていらっしゃったでしょう」
「そういえば、そうだな……」
一時期は頻繁にホームパーティーが行われていた。
昔ほどではないが、いまも我が家に招く客は少なくない。
ホストは家の主人である親父がつとめていた……
ということは、私がこれからその役をこなさなければならないのか。
話題を提供するのも主人の役目で、父も母もにこやかに振舞っているが、座ってくつろぐことはなかったと、今ごろ思い出していた。
両親の行いを見て育ったはずなのに、現実としてわが身に置き換えたとき、その大変さにいまさら気がついた。
その点、珠貴はしっかり心得ていたようだ。
新しいお部屋のリビングは、どれほどの広さがあるの? と具体的に聞いてくる。
送られてきた情報がこれだ……と、モバイル画面を表示させ、狩野と佐保さんにも見てもらいたいというと、ふたりは喜んで顔を寄せてきた。
「おっ、これは広いな。ダンスパーティーも開けるんじゃないか?」
「こちらは最上階ね。プライベートバルコニーがありますね。屋外でも楽しめるわ」
「こっちの物件はもっと広いぞ、走り回れそうだ」
「ただ広ければいいものではないのよ。
必要な時だけ開放する間取りの方が、使い勝手がいいはずよ」
「そうかぁ? 壁を移動するなんて面倒だろう」
「光熱費を考えてみて。間仕切りがあったほうが効率がいいでしょう」
「なるほどなぁ」
狩野と佐保さんのやりとりが続く。
家主になる我々より、狩野たちのほうが熱心だ。
すでに結婚生活の経験がある彼らだからこそ、気がつくポイントがあるのだろう。
何を基準に決めて良いのか漠然としていたが、ふたりの話を聞きながら要点が見えてきた。
黙って聞いている珠貴も、私と同じく決めかねているのだろうと思っていたら、
「キッチンも二箇所は必要ね。
できれば、玄関もお客さま様とプライベートに分けられたらいいけれど」
と話に参加してきた。
「キッチンがふたつあればスムーズでしょうね。
ゲストルームも数部屋は必要じゃありません?」
「そうですね。それから、欲を言えば和室もあれば」
「わぁ、和室は欲しいわね。釜が切ってあれば申し分ないけれど……
あっ、おふたりのお家なのに」
「私もそう思います。
お茶を差し上げるお席にもなりますし、お床があれば掛け軸もかけられますもの」
「ホント、それにね……」
いつのまにか、珠貴と佐保さんが頭をつき合わせて話し込んでいる。
家を決めるのは男だと思っていたが、実際に家で動くのは女性なのだから、女性の意見なくしては決められないのだとよくわかった。
「いっそのこと一戸建てにしたらどうだ。
広いリビングと複数のゲストルームと、キッチンは二箇所だな。
それに広いバルコニーが必要なんだろう? 庭付きの家を建てたほうがいいと思うけどね」
狩野の発言に、私も珠貴も、そして佐保さんも、思わず顔を見合わせた。



